短期大学の存在意義・役割を問う!短大をどう位置づけるべきか?

今日における短期大学にはどのような存在意義や役割があるのだろうか?このページは、そのような疑問について考察していくものである。

――大学進学率は上昇を続け、専修学校の進学率はほぼ横ばいで数位している。

その一方で、短大の進学率は平成6年の13.2%から、平成29年には4.7%にまで減少している。

他の種別と比較して、短大への進学率の減少幅は著しい。各所で短期大学の閉校や併合なども見られる。

短期大学は今、その存在意義が問われていると言って差し支えないだろう。

本稿では、私立短期大学教務担当者研修会で行われた文科省の講演「短期大学教育に関連する文教施策の現状について」の内容も踏まえながら、短期大学の存在意義について改めて確認していきたい。

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短期大学ならではの特徴は?

短期大学の位置づけは、曖昧である。文科省講演「短期大学教育に関する文教施策の現状について」でも、以下のような記載が見られる。

2040年に向けては、短期高等教育機関として、大学制度における短期大学の位置づけの再構築について検討が必要。
――文部科学省「短期大学教育に関する文教施策の現状について」より抜粋

以上の記述からは、短期大学の存在意義が薄れてきているのを受けて、短期大学の存在意義の見直しが必要であると考えられていることが読み取れる。

確かに、大学や専門学校が多数存在する中で、短期大学への進学を選択するためには、十分な動機が必要である。

そこで、短期大学の存在意義を確認するために、まずは短期大学の特徴を大学や専門学校などと比較しながら確認していく。

短期大学の存在意義として、たとえば以下のような特徴を挙げることができる。

短い期間と少ない費用

短期大学の修業年限は、2年または3年である。そのため、4年制大学と比較して短期で専門分野を修めることができる。

この点は、短期間で集中的に知識や技能を修得して早く社会経験を積みたい人や、短大卒業で資格取得要件を満たせる職業に就くことを目指している人などにとっては、魅力である。

また、修業年限が短いため、4年制大学と比較してかかる費用が少ないことも特徴の1つである。

以下は、静岡英和学院大学の「アンケート調査から見た短期大学の課題と将来像」から抜粋の抜粋である。

短期大学への入学に対する志望動機は、四年制大学と大きな違いが見られた。すなわち、1位に あげられる理由に、資格、就職が有利になるなど、経済的理由を含む項目が目立ち、2位以降の項 目を含めても、金銭的な負担がかからないところ、あるいは自宅から通学できるなどの項目の比率 が高くなっていた。共通して見られる事項として、将来の仕事に役立つ専門的知識・技術を身につ けたい、というものが挙がっているが、四年制大学の場合はその背景に、自らの興味のある、あるいは能力を伸ばしたいという欲求があるのに対し、短期大学の場合は、将来、経済的に有利な職業 に就きたいという動機があるものと考えられる。

短期大学の志望理由

――静岡英和学院大学「アンケート調査から見た短期大学の課題と将来像」より抜粋

この記事から、短期大学に進学する理由として、経済的負担が少なくなることを挙げる人が多いことがわかる。

また、1位に資格、就職に有利になるという項目が挙げられることから、短期間で職業的能力を身につけたいというニーズが大きいことが分かる。

職業や実生活に必要な能力を育成

短期大学の2つ目の特徴は、その教育目的が「職業又は実際生活に必要な能力」の育成にあるということである。この点について、4年制大学と比較しながら確認していく。

以下は、学校教育法より、大学の目的に関する記述を抜粋したものである。

第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
○2 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
――文部科学省「学校教育法(昭和22年法律第26号)-抄-」より引用

以上より、大学は学術的知識や能力の養成を目的とするものであることが分かる。

一方で、以下は、同法の短期大学の目的に関する記述の抜粋である。

第百八条 大学は、第八十三条第一項に規定する目的に代えて、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とすることができる。
○2 前項に規定する目的をその目的とする大学は、第八十七条第一項の規定にかかわらず、その修業年限を二年又は三年とする。
○3 前項の大学は、短期大学と称する。
――文部科学省「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)」より引用

以上より、短期大学の目的は「職業又は実際生活に必要な能力を育成すること」であることがわかる。

短期大学は、より実用的な能力の育成を重視している点で、4年制大学とは目的を異にするものなのである。

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「短期大学士」の<学位>が与えられる

短期大学が「職業又は実際生活に必要な能力を育成すること」を目的としているのであれば、専門学校と存在意義が似ているようである。短期大学と専門学校は何が違うのであろうか。

まず第一に、得られる肩書きが異なる。短期大学で得られるのは「短期大学士」であり学位であるのに対して、専門学校で得られるのは「専門士」であり称号である。

「学位」である短期大学士は国際的に通用するのに対して、専門士は国際的に通用しない。

そのため、例えば将来的に海外の大学に編入学を希望した際に、短期大学卒であれば編入も可能であるが、専門士では要件を満たさないのである。

一般教養教育の提供

短期大学が専門学校と異なる第二の点は、一般教養教育を提供していることである。

一般教養とは、大学ですべての学生に課せられる、専門教科以外の人文科学・社会科学・自然科学に関する基礎教養のこととされている。つまり、専門科目以外の分離をまたがる幅広い教養のことを指している。

この点に関しては、修文大学短期大学部の「短期大学と専門学校」の記事が分かりやすいので以下に引用する。

このように短期大学と専門学校の違いがはっきり分からず、誤解を抱いている人も多いのではないでしょうか。たとえば、めざす職業や取得したい資格が同じでも、学ぶ内容や身につく技術・知識の幅は異なるため、就職後の働き方や生き方に影響します。違いを知ったうえで納得して進路選びをしましょう。

短期大学のイメージ画像

専門学校のイメージ画像

専門学校の目的は、めざす職業に就くために必要な技術・知識を修得して、資格を取得することです。そのための時間がカリキュラムの多くを占めているため、希望する進路が確実に定まっている人に適しています。

対して短期大学は、専門分野を体系的に学ぶという大学ならではの目的を持つため、周辺分野や一般教養も学び、広い視野や人間性、問題解決力なども養います。その中でも四年制大学に比べると、学問的な視点より職業または実生活につながるような実学的傾向が強く、資格取得サポートも充実しています。
――修文大学・修文大学短期大学部「短期大学と専門学校」より引用

以上のように、短期大学では専門的・実用的な能力を養うだけでなく、「周辺分野や一般教養も学び、広い視野や人間性、問題解決力」をも養成するという点で、専門学校とは異なるのである。

例として、専門学校のカリキュラム例を確認する。以下は、日本工学院専門学校のコンサート・イベント科の時間割である。

日本工学院のカリキュラム例

――日本工学院専門学校「コンサート・イベント科カリキュラム」より抜粋

このカリキュラムを見ると、専門性を身につけるための科目は充実しているが、周辺分野や一般教養科目は提供されていないことが分かる。

変化の激しい現代においては、「T字型人材」という言葉に象徴されるように。専門的技能だけでなく周辺領域への幅広い知見をも兼ね備えた人材が求められるようになってきている。

このような状況下においては、専門的技能に加えて、一般教養をも学んでおくことの意義は十分すぎるほどあると言えるだろう。

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短期大学の存在意義・役割は?短大をどう位置づける?

前章では短期大学の特徴について確認したが、続く本章では、短期大学の特徴を踏まえた上で短期大学をどのように位置づけていけばいいのか、その役割について述べることとする。

短期間で専門性と教養の両方を身につけられる教育機関

短期大学の1つ目の存在意義として、短期間で実用的専門性と一般教養の両方を学ぶことができることが挙げられるだろう。

前章でも確認したが、短期大学は大学よりも修業年限が短いため、短い期間かつ少ない費用で、「職業又は実際生活に必要な能力」を得ることができる。

さらに、大学ならではの一般教養教育も提供しているため、専門学校にはない、幅広い視野から総合的に判断するための基礎的教養をも身につけることができる。

つまり、専門性と一般教養の両方を、2~3年という短期間で身につけることができるのである。

学問分野への入り口としての役割

短期大学の2つ目の存在意義として、「学問分野への入り口」としての役割を果たすことが期待できるだろう。

これはすなわち、ある程度の専門性を身につけて社会へ出るか、より深い学問的専門性を身につけるかを、実際に学びながら考えられるということである。

例えば、目指すべき職業が決まっていて、短期大学卒で必要な資格や専門性を得ることができるが大学での学びも視野に入っているような人の場合には、卒業後すぐに社会人として働くかより深く大学で学ぶかを、短期大学でその学問を実際に修めながら、考えることができる。

このようなスタイルは、18歳人口だけでなく、リカレント教育を考えるミドルエイジ以上の人にも有効である。

社会に出た後の学びなおしは、期間の面でも費用の面でも、保護者の扶養下にある頃と比較して格段に大きくなる。

なぜなら、学費は自身で工面する場合が多くなり、また、特に仕事をやめて新しい分野を学ぶ場合などには、収入が途絶えることにもなるからである。

そのような不安定な状況下にある学びなおしの際には、少ない年数で専門性を身につけた上でその先の選択を学んだ後に先延ばしできることは、きわめて魅力的である。

短期大学で学んでおけば、基礎的な教養教育を受けている分、その後に大学での学びに移行しても、スムーズに適応することができる。

「短期大学士」の称号があるため、卒業後、もしくは将来的に海外の大学に編入学することも可能である。

このように、学問専門性の基礎を身につけながらもその後の選択肢に幅をもたせることができるのは、短期大学が持つ特性ならではの魅力であろう。

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短期大学の存続の鍵は、存在意義を能動的に提供していくこと

前章で確認した、「短期間で専門性と教養の両方を身につけられる」点や、「学問分野への入り口としての役割」を果たし得る点などは、今後の短期大学を存続させていく上での存在意義の一部である。

例えば、以上のような意義であると定めれば、「短期間でどれだけの専門性が身につけられるか」、「教養科目がどのくらい充実しているか」、「大学への接続の役割を十分に果たし得るか」などの方向性を定め、指標化し、PDCAサイクルを回すことができる。

つまり、目指すべき方向性を明確化することによってこそ、現場での改善においても、場当たり的な対応ではなく、マクロ的かつ能動的な試行錯誤が生まれるのである。

――文部科学省ですら、「大学制度における短期大学の位置づけの再構築について検討が必要」と発信するほど、短期大学の存在意義は見直しを迫られている。

4年制大学でも簡単に入学できてしまう時代にあっては、「何のために短期大学に進学するのか」という進学希望者の動機に答えられるような存在意義をこちら側からしっかりと提供していく必要がある。

たとえば、音楽のバレエの世界は、プレイヤーとして活躍できる目安の年齢が低く、若いうちから厳しい競争を勝ち抜いていかなければならない。

そのような世界にあっては、ある音楽大学では、バレエプロを目指す学生のほとんどは、大学ではなく短期大学の門をたたく。

4年間も時間をかけて学んでいられるほど年齢的余裕がないからである。

つまり、集中的に学んでバレエの舞台で活躍することを希望する学生が多いのである。

今回取り上げた短期大学のバレエ科は、そのような動機をきちんと満たすことのできる成功例のひとつであろう。

本事例のように、大学ではなく短期大学に進学する積極的な理由づけができるような施策を行えるかどうかが、今後の短期大学の存続を左右する可能性がきわめて高い。

そのような成功例は、他短期大学を含め、まだまだ少ないはずである。

そうであるならば、短期大学も、現場からのミクロ的改善の積み重ねだけではなく、自らの立ち位置を明確にして進学する理由を生み出すという、より根本的な課題にもチャレンジしていく必要があるだろう。

つまるところ、短期大学が今後も生き残っていくためには、短期大学を選んでもらうための、大学や専門学校にはない積極的な魅力をこちらから提供していく必要がある、ということである。

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この記事を書いた人

大学職員として学生生活を支援する傍ら、大学で心理学を専攻する社会人学生。教育に従事する中で考察したことや、心理学について学んだことなどをできるだけわかりやすくまとめて発信しています。詳細はこちら

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